香川 六車塾

今回は自分自身の忘備録です。六車さんと話をして、なんか、忘れてはダメなことが山のように詰まってて、それを自分に生かせるかどうかは、全く関係なく、一応書いときます。
六車さんとは、香川の建築家六車誠二さんで、大学の先輩です。当時も凄い人でした。6Hぐらいの鉛筆で、凄いカリカリ書く。ガリガリ陰影を書く。あれは図面というより、陰影の設計でした。それで、5年ぐらい前かな、ゼミのOB会で久々あって、色々話してると、山の話になって。木の話になって。意外でした。それで色々嬉しくて、私も大尊敬してる先輩だったんで、恥ずかしいけど、自分の仕事見てもらおうと思って、年賀状出してたんです。そしたら、恐れ多くも先輩も仕事の写真の年賀状くれて。素晴らしい建築。鳥肌です。それは、六車事務所兼自宅の写真だったわけですが。カッコいいって言う様な簡単なものじゃなくて、それは私程度が語ったところで、あれなんですが、RCに鉄骨が載ってる。その鉄骨が半分は浮いてて、そこに木造が立ち上がってるんです。文で書くと奇抜なだけかと思うけど、そうじゃなくて、全部が必然で存在するわけです。必要だからそうなってる。
その六車さんという人が居て、そしてその人の建築があり、そのクロス感というか嘘のなさが凄いんです。人物がそのまま建築。楽しくて、愉快な感じも有り、明快で潔く、迷いがないです。書けば書くほど伝わらないですね。ままいいか。忘備録だし。
琴平の住宅が竣工したとのことで、見学会日には、間に合わなかったんですが、無理を言って案内していただきました。見学会日当日は150人ぐらい来られるので、多分話もできなかったと思います。しかも凄い方が全国から見にこられる。そこに1週遅れで1人だけ見せて頂いて。本当に有難い事です。

【原寸で考えろ】
六車さんは日建設計に3年いて、入る前に、処女作が出来たら辞めようと決めてたそうです。
しかし日建で処女作がってなると、普通5年、10年かかる。しかしあの通りの問題児だったから、2年目で、日建前の交番の設計を、生きのいいあいつにやらせようと成ったらしいです。ガラスブロックと粘土ブロックの交番。その設計をやるに当たって、チームは会社が最強メンバーを揃えてくれた。その中で伝説の現場監理の方がいて、この設計の全ディテールを書くように指示が出たそうです。
必死で全ディテールを書く。1/2スケールで。1週間徹夜して。思うんですけど。これ六車さんだからできる話で、普通は書けないです。全部ですもん。1週間では無理。ま、とにかく持って行った。やり直し。原寸で出せってなってまた1週間徹夜。「1/2と原寸で書くのと何か変ったか」「幾つか納まらない所を変えました」「よし、見よう」ってなって、それでやっと全部見てくれたらしいです。
【ディテールを覚えるな、素材の特性を知れ】
日建にもディテール集が有るらしいです。浦辺にも、何処でもあると思います。標準ディテールは、知っているのか聞かれた時に、六車さんは、あれは使えないので、全部考えた。って言ったそうです。日建には図面書きの職人のおじいちゃんが何人かおられたそうです。その方の言葉。
ディテールっていうのは、私はすごく好きで、山のように本を買っては、ディテール集を飽きることなく眺めてるんですが、それはそのそも何でなのか。考えたんです。どうすべきかを、いろんな人の知恵を貰って、作ろうとしてるんです。もちろん自分なりのアレンジを入れます。入れるけど、素材の声を聞いたものじゃない。その素材がどれだけたわんで、曲げに強いが圧縮に弱く、柔らかいが滑らか。だからこの加工。そこを知れば自ずと使い方が出てくるんですよね。六車さんの建築はそう言う建築です。木と鉄とコンクリートと土がぶつかるが違和感がなく、必然。素材の特性から設計が出て来てる感じです。
【コンクリートや鉄やガラスでやったことを、木や土や紙でやろうと思った】
図面書きの職人のおじいちゃんたち。それと、現場監理のベテランの方。その方がビルの上から順番におりて行き、職人に気をつけることを、指示して行く。実に的確で、確実に意図が伝わる。そう言う世界で素材を知り、作り方を知り、そこにしかない技術者を知る。その頃はアルミでありガラスだったけれども、それを木で。だから、山に入るところからスタートなんだと思いました。
【好きな事を仕事にしたら、毎日楽しい、苦しいけど頑張れる】
私が書くとえらく陳腐ですが、中学生に話す機会が有ったらしいです。勉強は嫌いと思うけど、好きな仕事を掴むためと思ったら頑張れる。僕は建築始めた18からずっと遊んでる気分や。苦しいよ。苦しいけど好きなら頑張れる」カッコええ事言うなー。
【家は人を受け止めないかんと思うんや】
人間はパーっと、明るい時ばかりじゃ無い。パーっていう時もあるけど、鬱々とこもりたい時もある。
家に振幅が無いとそれを上手く受け止めてやれん。
その高さというか低さというか、何で解るんですか。の問いに対して。琴平の家はある場所ある場所で、全然感覚が違う。明るくて暗く、抜けてて、閉じてて開いている。ちょっと愉しい。旅してる感じだったので。
【いい質問を常に考える】
いい答えを考える必要は無いから、いい質問を考え。私がいろんな人に会いに行きたいな。って思うんです。という問いに対して。俺も会う前に色々考えるよ。あった時になんてしょうもない質問してるんかなって、思うけどそれでも、一生懸命考えれば、相手は凄く真っ直ぐに答えを返してくれるけん。
【一つづつやったらええよ】
何で六車さん、自分の建築が此れだってわかるんですか。的な質問に対して。私はどう頑張っても、六車さんのようになれる気がしません。どうしたら、自分は此れだってわかるんですか。という問いに。いっぺんにやろうとするからや。一つずつやったらええよ。リフォームの仕事は有るか?有ります。それがチャンスやけん。少しずつ試してみたらええ。
【材料に金を掛けずに、人件費をかけて、手間暇かけて作ろうと思う】
そうじゃないと疲弊する。大きな設備作って、国の補助出してもらって、働いてる人は3人。3人でできるような仕事にしてしまっては良くない。人が100人居ての知恵を集めてやった方がいいもんができる。
【設計はみんなの太鼓持ちやけん。施主だけの太鼓持ちに成るのは違う】
施主がこうしたいっていうても、それは職人がいい気持ちがしません。それは山が喜びません。って施主にいう。そこを間違ったら良くないよね。

以上です。まだ色々あるけど。
しばらく自分もよく考えて、4月に成るけど、どうしたいのか。もう一回考えてみようと思ってます。
六車さんのようには到底無理だけど、一個一個探るのはできると思う。まず一つを考えて、作ってる人とか、使ってる人と話して、こうしようと思ってますとか。そういうことから、何かもう少し見えるようになるかもだし。
六車さんには師匠は居ないそうです。日建の考え方がすべてのベースらしいです。
確かに何処にも無い世界観です。
自分も一応六車さんの後輩のくせに、全然成ってないねって言われるのは申し訳ない。そういうのもすごく思いました。
文が下手で、どうしようもないけど、そんな感じです。
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